防衛分野における開発の最前線:Sakana AI、Software Engineerインタビュー



Sakana AIは、自然界の集合的知性から着想を得たユニークな生成AI技術の研究開発を行っています。この世界トップレベルの技術を社会に実装するため、2025年初頭にApplied Teamを始動しました。現在注力しているのは、金融や防衛など、社会の基盤となる分野です。その中でも防衛分野はいま急速に動き始めています。

では、その現場でSoftware Engineerは何をしているのでしょうか。システムを設計し、コードを書き、AIをプロダクトに実装する——そのような仕事が、防衛分野でどのように展開されているか、イメージできる人はあまり多くないのではないでしょうか。

本記事ではSakana AIの防衛分野でSoftware Engineerとして働く伊藤大さんへのインタビューを通じて、その働き方とその魅力をご紹介します。



インタビューイー

伊藤 大
Masaru Itoh
Software Engineer

日米のバックグラウンドを持ち、九州大学在学時よりエンジニアとしてのキャリアを開始。組み込み機器、モバイルアプリ、Webサービスのフルスタックなど幅広い領域の経験を積み、2016年からはLINEヤフー株式会社にて大規模分散システムの設計、開発、運用に従事。

GYAO!のメタデータシステムのオーナー、Yahoo!映画のバックエンドや広告検索のランキング改善のプロジェクトテックリード、検索エンジン上の機械学習リランカーのチームリードを歴任。その後、Sakana AIに防衛分野のSoftware Engineerとして参画。





なぜSakana AIへ? これまでのキャリア

── これまでのキャリアを教えてください。

Yahoo! JAPAN時代から含めて、LINEヤフーには約10年間在籍しました。キャリアの前半はGYAO!やヤフー映画といったサービス開発の現場、後半は検索やML基盤などの横断的な技術組織に身を置き、一貫して大規模な分散システムの設計・開発・運用に従事してきました。

GYAO!では新規システムのオーナーとして作品メタデータの管理基盤を構築し、ヤフー映画ではサービス全体の技術刷新プロジェクトにて、バックエンド領域のTech Leadを務めました。その後は、広告検索エンジンの開発やSolrを用いたMLリランカー開発のチームリード、そしてリアルタイムな学習・推論を実行するML基盤の開発へと、徐々にプラットフォーム寄りのロールへと専門性を広げていきました。

前職には、自らの意志で希望するチームへの異動を志願できる優れた制度がありました。未経験の領域であっても、自身のキャリア志向に従って挑戦し、多様な技術領域で経験を積めたことには、今でも深く感謝しています。

各ロールを振り返ると、非常に多くのやりがいがありました。GYAO!でPoCから着手したClojure実装の基盤が、最終的に旧システムを完全に置き換えるまでに育ったこと。広告検索で極低レイテンシを実現するために、カリカリにチューニングされた独自実装のC++エンジンを大規模に運用したこと。初めてMLシステムに触れ、その効果の大きさに驚愕しながら必死にキャッチアップしたこと。

これらに共通するのは、日本最大規模の自社インフラとサービスの上での開発に身を置けた点です。大規模な分散システムを自ら作り出し、多くのユーザーに提供するインパクトと責任の重さを日々実感する時間でした。実生活に密着したデジタルインフラを支える仕事には大きな意義を感じながら、次第にプライベート企業のWebサービスの枠を超えた社会貢献できる道があるのではないか、とも意識するようになりました。


── 充実したキャリアの中で、Sakana AIとの出会いはどのようなものでしたか?

リクルーターの方からお声掛けいただいたのですが、それまでは正直「謎のAIリサーチラボ」ぐらいの印象しかありませんでした(笑)

印象が大きく変わったのは岩井さんとのカジュアル面談で、そこで初めて金融・防衛プロダクトの存在を知りました。選考過程の技術課題も印象深くて、まず単純に内容が面白く、課題設計に人材像の意図が明確に感じられて、改めて興味を引かれました。

最大の決め手はDavidさん(弊社CEO)との会談でした。企業としてのあり方や、今後開発していく予定のプロダクトのビジョンを惜しむことなく共有いただき、オープンエンドネスを重視する文化、ビジネスの具体的な進捗、明確な技術的優位性が揃っていて、会社自体の大きな飛躍が期待できると感じました。




防衛分野のSoftware Engineer

── 防衛分野のSoftware Engineerというポジションは、業務内容をイメージしにくいと思います。具体的にはどのようなプロジェクトや課題があるのでしょうか?

インテリジェンス領域ではSNS空間の偽情報対策の独自技術の開発していて、同様の技術が読売新聞社様との共同で行ったSNS上の「認知戦」の可視化にも活用されています。


防衛領域では、部隊行動の迅速な状況把握と意思決定の基盤となる指揮統制システムの開発を行っています。ドローン等も含めた現場で発生する大量のデータを統合・分析し、適切な判断と指揮司令のサポートをすることを目指しています。


── そうした領域で、Software Engineerとして具体的にはどのようなことを求められているのでしょうか?

防衛領域で実現すべきアプリケーションはプロツールで、ドメインに精通した熟練者が最大の効果を発揮するために利用するものです。ユーザーの目的を深く理解し、それを達成するためのワークフローと機能性を磨き込み、阻害要因を取り除くことが最も重要だと考えています。

実際の開発スタイルは、形式的なプロセスや会議体に縛られず必要なことだけやるagileな方法を取っていて、具体のヒアリングから自由に課題を抽出し、優先順位を合意しながら実装を行い、次のフィードバックを得るサイクルを進めています。


── 仕事のやりがいや面白さはどこにありますか?また、日常的にどのような技術スタックや開発スタイルで仕事をしているのかも教えてください。

ソフトウェアを通じて日本の重要課題である国防に関わり、安全保障が関わるミッションクリティカルな状況のサポートに携われることに、責任とともに大きな充実を感じています。こういった経験ができる環境に身をおけることは稀有で、今後も少しでも多くの価値を提供できることを期待しています。

技術スタックは現状では標準的なスタックで、MLとの親和性が高いPythonをバックエンドに、TypeScript/Next.jsのWeb UI、KotlinのAndroidアプリが主な要素です。Infrastructureは一般的なWebアプリケーションでクラウド環境で構成することもありますが、DDIL(通信が阻害、切断され、断続し、帯域が著しく制限される)環境を想定した分散システムは大きく異なる構成を選択します。チームの開発toolingの統一はライトにmiseで行っています。 情報ガバナンスを確実に守れる運用を前提に、生成AIは業務全般に渡って不可欠なツールだと感じています。実装のみならず、ゴール設定や課題の抽出にも活用しており、同じ人数でより高品質な成果を短期間で実現するのに役立てています。

防衛領域においては、これまでのキャリアのあらゆる要素をフル動員している感覚があります。指揮統制システムでは、様々なデバイスによるインプット方法にエッジ推論を組み合わせたり、DDIL環境で稼働できる分散システムを設計したりと、多数の領域をまたがった開発を行っています。

自分たちの成果物の一つ一つが自衛官の生命に関わることを考えると、これ以上の緊張感や責任感はありません。このミッションクリティカルな領域に生成AIを活用するのは特に深い注意が必要で、実装コードやシステムの出力の品質には人が確実に介在し、担保することが極めて重要です。


── チームの雰囲気や、Applied Research EngineerとSoftware Engineerの役割分担についても聞かせてください。

一般にApplied Research EngineerはMLモデリングを中心としたデータサイエンティスト像、Software Engineerはそれをプロダクト化する役割を担うイメージですが、防衛はプロダクトフェーズが初期段階なこともあり、決まった分担よりも「できる仕事を全員で取り組む」密な関係の印象です。私は入社して日が浅いですが、このおかげですぐに馴染めたとも感じています。

初期段階ではコミュニケーションが重要ですが、チームメンバーは温和で気さくな方ばかりで、日々楽しみながら議論を進めています。領域への真剣さが求められるだけに、議論自体は和やかにできるメンバーのお人柄にただ感謝しています。

防衛に限らず、社員どうしのランチ会食の費用を会社が負担する制度もあり、ありがたくフル活用しています。ランチにご一緒して初めて出会う社内メンバーも多く、不思議なほど良い方ばかりで驚いています(同席募集のシステムもあるので、一人ぼっちになってしまう心配もありません!)。


── 最後に、防衛分野に興味があるエンジニアへ、メッセージをお願いします。

Software Engineerが活躍する場として、広告やレコメンデーションに代表される市場規模の大きい営利活動は社会貢献の面でも非常に重要ですが、防衛に携わることで得られる充実感は一味違うと実感しています。

防衛領域の事前知識を持つエンジニアは少ないと思いますが、チーム内には防衛省、外務省出身のエキスパートも在籍しています。私自身、ソフトウェアと関連の高いサイバー領域や認知戦を多少聞きかじった程度で、陸・海・空の防衛についてはほぼ知識がない状態で飛び込みましたが、皆さんの力を借りてキャッチアップしながらSoftware Engineerとして貢献しています。

Sakana AIの防衛への取り組みはこれから大きな拡大が期待される領域で、まさに今のタイミングが意思決定に広く深く影響を及ぼせる、最も面白い時期だと思っています。まずは話を聞いてみるカジュアル面談からでも、この領域に興味関心がある方のご応募をお待ちしております!




採用情報

「自分たちの成果物の一つ一つが、自衛官の生命に関わる」——インタビュー中のこの言葉が、非常に印象的でした。それは決して単なる重圧ではなく、エンジニアとしての深い充実感の源として語られていました。

自分の書いたコードが、国の安全や意思決定の速度に直結する。この圧倒的なスケールと社会的インパクトこそが、防衛分野における開発の醍醐味と言えるのかもしれません。

Sakana AIでは、多様なバックグラウンドを持つメンバーが、最先端AI技術の社会実装に挑んでいます。この大きな使命に共感し、共に未来を創っていただける方を心よりお待ちしています。

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